日本は今でもモノづくり大国といえるのでしょうか.最近,アメリカからのインターンシップ学生が研究室に2か月間所属し,私が研究代表を務める研究チームに所属してくれました.彼は学部4年生でしたが,自分が思い描く機構を自分で図面に書き,部品やモータを選定し,プログラムを書き,ハードウェアへ実装するまで,ほとんど一人で行うことができました.今の学部生,ましてや大学院生を含めてもここまで自力で行うことができる人材は一体日本にどの程度いるのでしょうか.
2019年の経済産業省の報告書「ロボットを取り巻く環境変化と今後の施策の方向性~ロボットによる社会変革推進計画~,ロボットによる社会変革推進会議」(1)によると,世界の産業用ロボット販売台数は2013年から2017年の5年間で2倍に増加し,今後も年平均14%増の見込みと報告しています.さらに,日本は世界一のロボット生産国であり,販売台数シェアは世界のロボットの6割弱であると報告しています(約38万台中21万台が日本メーカー製).
これだけを見ると,日本はまだまだ捨てたものではないと感じますが,日本製ロボットシェアは2000年ごろまで9割近くあったものが年々シェア率を落としています.特に最近では続々と世界中で新たな会社が参入し,今後も日本が第一線で戦うことができるかは不明です.同報告書の最後に今後のロボット政策の基本的考え方として,「我が国において,引き続き,ロボットの社会実装を推進していくことが最重要課題.我が国は課題先進国かつロボットメーカーを複数擁するものの,ロボット導入密度は世界4位.導入が進まない中小企業等に関する取組を抜本的に強化し,強力に推進していく必要がある」と報告しています.
私も学生にはモノづくりに関する一通りのプロセスを経験してもらえるように努めていますが,日本が将来もモノづくり大国と胸を張って言えるように,大学としても考えていく必要があります.